不動産の取引(全90問中40問目)

No.40

不動産の売買契約における民法上の留意点に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、特約については考慮しないものとする。
2018年5月試験 問43
  1. 買主が売主に解約手付を交付した場合、買主が契約の履行に着手する前であれば、売主は、手付金を全額返還することにより契約の解除をすることができる。
  2. 売買の目的物に契約内容の適合しない事実があった場合、売主がその契約不適合について善意無過失であるときは、売主は、担保責任を負わない。
  3. 売主の責めに帰すべき事由により、売買契約の目的物である不動産の引渡しに遅滞が生じた場合、買主は、催告をすることなく直ちに契約の解除をすることができる。
  4. 売買の目的物である建物が、売買契約締結後から引渡しまでの間に、水害等の天災により滅失した場合、買主は売主に対する代金の支払いを拒むことができる。

正解 4

問題難易度
肢111.7%
肢28.6%
肢312.1%
肢467.6%

解説

  1. 不適切。買主が売主に解約手付を交付した場合、相手方が契約の履行に着手するまでは、買主は交付した手付の放棄、売主は手付の倍額を現実に提供することにより、契約の解除をすることができます。
    不動産の売買契約において買主が売主に手付金を交付した場合、売主が契約の履行に着手する前であれば、買主はその手付金を放棄することで契約を解除することができる。2023.9-43-2
    買主が売主に解約手付を交付した場合、買主が契約の履行に着手するまでは、売主は受領した解約手付を返還して当該契約の解除をすることができる。2022.1-43-1
    買主が売主に解約手付を交付した場合、買主が契約の履行に着手するまでは、売主は、受領した手付金の倍額を買主に現実に提供することにより、契約を解除することができる。2018.9-43-2
    買主が売主に解約手付を交付した場合、売主が契約の履行に着手するまでは、買主はその解約手付を放棄することにより、売買契約を解除することができる。2015.5-43-1
    買主が解約手付を交付した場合、買主が契約の履行に着手するまでは、売主はその手付の倍額を買主に現実に提供することにより、売買契約を解除することができる。2013.5-42-1
  2. 不適切。原則として売主の担保責任は無過失責任とされています。よって、売買の目的物に契約不適合があった場合には、それが売主の故意・過失によるものではなかったとしても、売主は買主に対して担保責任を負うことになります。
    売買の目的物に契約内容に適合しない事実があった場合、売主は、その契約不適合があることについて故意または重大な過失があるときに限り、買主に対して担保責任を負う。2018.9-43-4
    売主は、売買の目的物に契約内容に適合しない事実があることを知らなかった場合、その契約不適合について担保責任を負う必要はない。2017.5-43-4
    売買の目的物に契約内容に適合しない事実があった場合、その契約不適合について売主に過失がなくても、売主は、原則として、担保責任を負わなければならない。2017.1-44-1
    売買契約の目的物に契約内容に適合しない事実があった場合、売主は、その不適合があることについて故意または過失があるときに限り、買主に対して担保責任を負う。2015.1-42-3
    売買契約の目的物である建物に契約内容に適合しない事実があった場合、売主は、その契約不適合について故意または過失がある場合に限り、買主に対して担保責任を負う。2014.1-44-3
    売買契約の目的物に契約内容に適合しない事実があった場合、その契約不適合について契約時に買主が知っていた場合には、売主は買主に対して担保責任を負わない。2013.9-43-3
    民法では、売買契約の目的物に契約内容に適合しない事実があった場合、その契約不適合について売主に過失がなくても、売主は、原則として、担保責任を負わなければならないとされる。2013.1-42-4
  3. 不適切。債務不履行が履行遅滞である場合には、相当な期間を定めて相手方に履行を催告し、その期間内に履行がない場合でなければ契約解除できません。催告不要で契約解除できるのは履行不能や履行拒絶の場合です。
    売買契約締結後、買主の責めに帰することができない事由により、当該契約の目的物の引渡債務の全部が履行不能となった場合、買主は履行の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。2023.5-43-4
    売買契約締結後、買主の責めに帰することができない事由により、当該契約の目的物の引渡債務の全部が履行不能となった場合、買主は履行の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。2023.1-43-3
    売買契約締結後、買主の責めに帰すことのできない事由により、当該契約の目的物の引渡債務の全部が履行不能となった場合、買主は、履行の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。2022.9-43-1
    売買契約締結後、買主の責めに帰さない事由により、当該契約の目的物の引渡債務の全部が履行不能となった場合、買主は履行の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。2022.1-43-4
    売買契約締結後、当該売買契約に定められている売主が負う債務の全部の履行が不能となった場合、その履行不能が買主の責めに帰すべき事由によらないときは、買主は、履行の催告をすることなく当該売買契約を解除することができる。2021.3-43-3
    売買契約締結後、売主の責めに帰すべき事由により引渡しに履行遅滞が生じた場合、買主は、催告なく直ちに契約を解除することができる。2017.1-44-3
    売買契約締結後、売主の責めに帰すべき事由により引渡しなどの履行遅滞が生じた場合、買主は、催告をすることなく直ちに契約を解除することができる。2015.5-43-2
    売主の責めに帰すべき事由により、売買契約で定められている債務の履行が不能となった場合、買主は、履行の催告をすることなく当該契約を解除することができる。2015.1-42-4
    売主の責めに帰すべき事由により、売買契約で定められている債務の履行が不能となった場合、買主は、履行の催告をすることなく当該契約を解除することができる。2013.9-43-2
  4. [適切]。契約締結から引渡しまでの間に、天災などのやむを得ない原因(売主・買主の責めに帰すことのできない事由)で売買目的物が滅失した場合、売主の引渡し債務は履行不能となり消滅し、買主は売主に対する代金支払いを拒むことができます。
    民法改正前は、売主の建物引渡し債務が消滅する一方、買主の代金支払い債務は残ったままとなり、建物の引渡しがないのに代金を支払うことが民法上の規定でした。この規定は不合理であったため、民法改正により実務に即した形に変更されました。
    売買の目的物である建物が、その売買契約の締結から当該建物の引渡しまでの間に、地震によって全壊した場合、買主は、売主に対する建物代金の支払いを拒むことができる。2023.9-43-4
    売買の目的物である建物が、その売買契約の締結から当該建物の引渡しまでの間に、台風によって全壊した場合、売主の責めに帰することができない事由であるため、買主は、売主に対する建物代金の支払いを拒むことはできない。2023.5-43-2
    売買の目的物である建物が、その売買契約の締結から当該建物の引渡しまでの間に、地震によって全壊した場合、買主は売主に対して建物代金の支払いを拒むことができる。2023.1-43-1
    売買の目的物である建物が、その売買契約の締結から当該建物の引渡しまでの間に、台風によって全壊した場合、売主の責めに帰すことのできない事由であることから、買主は、売主に対して建物代金の支払いを拒むことはできない。2022.9-43-4
    売買の目的物である建物が、売買契約締結後から引渡しまでの間に台風等の天災によって滅失した場合、買主は売買代金の支払いを拒むことができない。2022.1-43-3
    売買の目的物である建物が、その売買契約の締結から当該建物の引渡しまでの間に、地震によって全壊した場合、買主は売主に対して建物代金の支払いを拒むことができる。2021.9-42-3
    売買の目的物である建物が、売買契約締結後から引渡しまでの間に、水害等の天災により滅失した場合、買主は売主に対して売買代金の支払いを拒むことができない。2017.1-44-4
    売買契約の目的物である建物が、売買契約締結後から引渡しまでの間に、水害等の天災により滅失した場合、売主は買主に対して売買代金の請求をすることができる。2014.1-44-2
    売買の目的物である建物が、売買契約締結後引渡しまでの間に、自然災害などの売主の責めに帰すべき事由によらずに毀損した場合には、買主は売主に対して、代金の減額を請求することができない。2013.5-42-3
したがって適切な記述は[4]です。