不動産の取引(全90問中9問目)

No.9

不動産の売買契約に係る民法の規定に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、特約については考慮しないものとする。
2023年1月試験 問43
  1. 売買の目的物である建物が、その売買契約の締結から当該建物の引渡しまでの間に、地震によって全壊した場合、買主は売主に対して建物代金の支払いを拒むことができる。
  2. 不動産が共有されている場合に、各共有者が、自己が有している持分を第三者に譲渡するときは、他の共有者の同意を得る必要はない。
  3. 売買契約締結後、買主の責めに帰することができない事由により、当該契約の目的物の引渡債務の全部が履行不能となった場合、買主は履行の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
  4. 売主が種類または品質に関して契約の内容に適合しないことを知りながら、売買契約の目的物を買主に引き渡した場合、買主は、その不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しなければ、契約の解除をすることができない。

正解 4

問題難易度
肢16.0%
肢226.9%
肢322.4%
肢444.7%

解説

  1. 適切。契約締結から引渡しまでの危険(リスク)は売主が負担します。自然災害のように、当事者双方の責めに帰することができない事由によって売買目的物が滅失した場合、買主は売主に対する代金支払いを拒むことができます。
    売買の目的物である建物が、その売買契約の締結から当該建物の引渡しまでの間に、地震によって全壊した場合、買主は、売主に対する建物代金の支払いを拒むことができる。2023.9-43-4
    売買の目的物である建物が、その売買契約の締結から当該建物の引渡しまでの間に、台風によって全壊した場合、売主の責めに帰することができない事由であるため、買主は、売主に対する建物代金の支払いを拒むことはできない。2023.5-43-2
    売買の目的物である建物が、その売買契約の締結から当該建物の引渡しまでの間に、台風によって全壊した場合、売主の責めに帰すことのできない事由であることから、買主は、売主に対して建物代金の支払いを拒むことはできない。2022.9-43-4
    売買の目的物である建物が、売買契約締結後から引渡しまでの間に台風等の天災によって滅失した場合、買主は売買代金の支払いを拒むことができない。2022.1-43-3
    売買の目的物である建物が、その売買契約の締結から当該建物の引渡しまでの間に、地震によって全壊した場合、買主は売主に対して建物代金の支払いを拒むことができる。2021.9-42-3
    売買の目的物である建物が、売買契約締結後から引渡しまでの間に、水害等の天災により滅失した場合、買主は売主に対する代金の支払いを拒むことができる。2018.5-43-4
    売買の目的物である建物が、売買契約締結後から引渡しまでの間に、水害等の天災により滅失した場合、買主は売主に対して売買代金の支払いを拒むことができない。2017.1-44-4
    売買契約の目的物である建物が、売買契約締結後から引渡しまでの間に、水害等の天災により滅失した場合、売主は買主に対して売買代金の請求をすることができる。2014.1-44-2
    売買の目的物である建物が、売買契約締結後引渡しまでの間に、自然災害などの売主の責めに帰すべき事由によらずに毀損した場合には、買主は売主に対して、代金の減額を請求することができない。2013.5-42-3
  2. 適切。共有持分は所有権のひとつですから、自己の持分については他の所有者の同意を得なくても第三者に譲渡できます。他の共有者全員の同意が必要なのは、共有物を変更・処分する場合です。
    不動産が共有されている場合に、各共有者が、自己の有している持分を第三者に譲渡するときは、他の共有者の同意を得る必要がある。2023.9-43-3
    不動産が共有されている場合、各共有者は、自己が有している持分を第三者に譲渡するときは、他の共有者全員の同意を得なければならない。2023.5-43-3
    建物が共有の場合、各共有者は、自己が有している持分を第三者に譲渡するときには、他の共有者の同意は必要としない。2022.5-43-2
    不動産が共有されている場合、各共有者は、自己が有している持分を第三者に譲渡するときには、他の共有者全員の同意を得なければならない。2021.9-42-2
    建物が共有の場合、各共有者は、自己が有している持分を第三者に譲渡するときには、他の共有者全員の同意を得なければならない。2020.9-43-2
    共有となっている建物について、自己が有している持分を第三者に譲渡するときは、他の共有者全員の同意を得なければならない。2019.9-43-4
  3. 適切。債務不履行には「履行不能」と「履行遅滞」があり、それぞれの状態において、契約解除をしたい債権者がとるべき手続きは異なります。
    履行不能(履行が不可能であるとき)
    履行拒絶(相手方が履行拒絶の意思を明確に示したとき)
    履行の催告をすることなく、直ちに契約解除できる
    履行遅滞(履行ができるのに履行期を過ぎても履行しないとき)
    相当の期間を定めて履行の催告をし、その期間内に履行されないときに契約解除できる
    本肢は「履行不能」の状態なので、履行の催告をすることなく直ちに契約の解除ができます。
    売買契約締結後、買主の責めに帰することができない事由により、当該契約の目的物の引渡債務の全部が履行不能となった場合、買主は履行の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。2023.5-43-4
    売買契約締結後、買主の責めに帰すことのできない事由により、当該契約の目的物の引渡債務の全部が履行不能となった場合、買主は、履行の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。2022.9-43-1
    売買契約締結後、買主の責めに帰さない事由により、当該契約の目的物の引渡債務の全部が履行不能となった場合、買主は履行の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。2022.1-43-4
    売買契約締結後、当該売買契約に定められている売主が負う債務の全部の履行が不能となった場合、その履行不能が買主の責めに帰すべき事由によらないときは、買主は、履行の催告をすることなく当該売買契約を解除することができる。2021.3-43-3
    売主の責めに帰すべき事由により、売買契約の目的物である不動産の引渡しに遅滞が生じた場合、買主は、催告をすることなく直ちに契約の解除をすることができる。2018.5-43-3
    売買契約締結後、売主の責めに帰すべき事由により引渡しに履行遅滞が生じた場合、買主は、催告なく直ちに契約を解除することができる。2017.1-44-3
    売買契約締結後、売主の責めに帰すべき事由により引渡しなどの履行遅滞が生じた場合、買主は、催告をすることなく直ちに契約を解除することができる。2015.5-43-2
    売主の責めに帰すべき事由により、売買契約で定められている債務の履行が不能となった場合、買主は、履行の催告をすることなく当該契約を解除することができる。2015.1-42-4
    売主の責めに帰すべき事由により、売買契約で定められている債務の履行が不能となった場合、買主は、履行の催告をすることなく当該契約を解除することができる。2013.9-43-2
  4. [不適切]。種類または品質に関して売主の契約不適合責任を追及するには、買主はその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知するというのが原則です。ただし、売主が引渡し時に知っていた不適合については1年以内に通知するしないにかかわらず、当該請求権が消滅時効にかかるまで売主の担保責任を追及することができます。
    売主が種類または品質に関して契約の内容に適合しないことを過失なく知らないまま、売買契約の目的物を買主に引き渡した場合、買主は、不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないときは、その不適合を理由として契約の解除をすることができない。2022.9-43-2
    売主が種類または品質に関して契約の内容に適合しないことを知りながら、売買契約の目的物を買主に引き渡した場合、買主は、その不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しなければ、その不適合を理由として契約の解除をすることができない。2022.1-43-2
したがって不適切な記述は[4]です。