相続と法律(全68問中26問目)

No.26

遺産分割に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
2020年1月試験 問56
  1. 共同相続された預貯金は遺産分割の対象となり、相続開始と同時に当然に法定相続分に応じて分割されるものではない。
  2. 代償分割は、現物分割を困難とする事由がある場合に、共同相続人が家庭裁判所に申し立て、その審判を受けることにより認められる分割方法である。
  3. 相続財産である不動産を、共同相続人間で遺産分割するために譲渡して換価した場合、その譲渡による所得は、所得税において非課税所得とされている。
  4. 被相続人は、遺言によって、相続開始の時から10年間、遺産の分割を禁ずることができる。

正解 1

問題難易度
肢147.8%
肢219.9%
肢316.9%
肢415.4%

解説

  1. [適切]。被相続人の有していた債権債務は、相続開始と同時に相続分に従って相続人に承継されるのが原則ですが、共同相続された預貯金(債権)は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象に含まれます。預貯金を共同相続した場合には共同相続人の共有に属することになるので、遺産分割が行われるまでは、各相続人が単独で解約や払戻しを行うことはできません。
    これだと、当面の生活費や葬儀費用に不便が生じる可能性があるため、2019年7月の民法改正で「預貯金払戻し制度」が新設され、一部を単独で払戻しできるようになりました。
  2. 不適切。代償分割は、共同相続人のうち特定の者に相続財産の現物を取得させ、その取得した相続人が、他の相続人に対して代わりとなる自己の財産(代償財産)を交付する方法です。家庭裁判所の審判を受ける必要はなく、遺産分割協議においても選択することができます。家庭裁判所の審判を受けて分割する方法は「審判分割」と呼ばれます。
    代償分割は、現物分割を困難とする事由がある場合に、共同相続人が家庭裁判所に申し立て、その審判を受けることにより認められる分割方法である。2023.5-53-3
    代償分割は、現物分割を困難とする事由がある場合に、共同相続人が家庭裁判所に申し立て、その審判を受けることにより認められる。2023.1-55-2
    代償分割は、現物分割を困難とする事由がある場合に、共同相続人が家庭裁判所に申し立て、その審判を受けることにより認められる分割方法である。2019.1-56-4
    代償分割は、現物分割を困難とする事由がある場合に、相続人全員が共同して家庭裁判所に申述することにより認められる分割方法である。2015.5-55-3
  3. 不適切。換価分割は、相続財産の全部または一部を現金化して、その代金を共同相続人間で分けることで遺産分割をする方法です。共同相続人が換価代金を受け取った場合、換価代金の配分割合で相続財産を取得して売ったとみなされるため、譲渡益があれば、各相続人の譲渡所得として所得税の課税対象になります。
    相続財産である不動産を、共同相続人間で遺産分割するために譲渡して換価した場合、その譲渡による所得は、所得税において非課税所得とされている。2023.1-55-3
    相続財産である不動産を、共同相続人間で遺産分割するために譲渡して換価した場合、その譲渡による所得は、所得税法上、非課税所得とされている。2022.9-53-4
  4. 不適切。遺産の分割は、原則として相続が開始した後は自由にできますが、被相続人は、遺言によって、相続開始の時から5年を超えない期間を定めて遺産の分割を禁じることができます。
    被相続人は、遺言によって、相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。2023.1-55-4
    被相続人は、遺言で、相続開始の時から1年間に限り、遺産の分割を禁ずることができる。2022.9-53-3
    被相続人は、遺言によって、相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。2019.5-54-1
    被相続人は、遺言によって、相続開始の時から10年間、遺産の分割を禁ずることができる。2017.9-54-1
    被相続人は、遺言により、相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。2016.1-55-1
    被相続人は、遺言で、相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。2015.10-54-1
したがって適切な記述は[1]です。