相続と保険の活用(全3問中2問目)

No.2

非上場会社であるX株式会社(以下「X社」という)のオーナー社長のAさん(45歳)は、契約者(=保険料負担者)がX社、被保険者がAさん、死亡保険金受取人がX社である定期保険に加入することを検討している。この定期保険の活用等に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、Aさんの月額給与の額は100万円であるものとする。
2017年5月試験 問60
  1. 長期平準定期保険や逓増定期保険に加入することにより、Aさんの勇退時の退職慰労金の原資を準備することができる。
  2. Aさんが死亡した場合、X社は、受け取った死亡保険金の金額と同額の死亡退職金をAさんの遺族に支払っても、法人税の取扱い上、その全額を損金に算入できないこともある。
  3. Aさんが業務上の事由により死亡し、X社が受け取った死亡保険金を原資として社内規定による弔慰金をAさんの遺族に支払った場合、その金額が相続税の課税対象とならないのは600万円以内に限られる。
  4. Aさんが死亡し、Aさんの長男(後継者)が相続により取得した財産の大半がX社株式であり、相続税の納税資金が不足する場合、X社は、死亡保険金を活用して長男からX社株式の一部を取得することによって、長男の資金不足を補うことができる。

正解 3

問題難易度
肢17.1%
肢211.6%
肢368.4%
肢412.9%

解説

  1. 適切。長期平準定期保険や逓増定期保険などの解約返戻金があるタイプの生命保険に加入すれば、保険料の一部を損金計上しながら簿外に積み立てを行うことができます。このような保険に加入することによって、計画的に退職慰労金の原資を用意することができます。
  2. 適切。法人税上、死亡退職金を支払う法人は、役員の在職期間や退職事情等から適正と認められる額までは損金算入できますが、それを超える額については否認され損金算入できません。
  3. [不適切]。相続人が被相続人の勤務先から弔慰金等を受け取る場合、死亡退職金とは別に相続税の非課税財産となり、以下の金額まで相続税がかかりません。
    死亡の原因が業務上の理由による場合
    弔慰金等のうち普通給与の3年分以下の部分
    死亡の原因が業務外の理由による場合
    弔慰金等のうち普通給与の6ヶ月以下の部分
    Aさんは業務上の事由により死亡しているため、「100万円×3年分(36ヶ月)=3,600万円」までが課税対象外となります。
  4. 適切。相続財産の大半が自社株だと、後継者が自己資金で多額の相続税を負担することになります。後継者の納税資金が不足している場合には、会社が先代の死亡保険金を使って後継者の株式を買い取ることにより、後継者の納税資金を確保することができます。事業承継における生命保険の活用方法の1つです。
したがって不適切な記述は[3]です。