事業承継対策(全18問中16問目)

No.16

株式会社X社の社長であるAさん(X社の全株式を保有)は、後継者で常務取締役である長男Bさんが経営権を確実に確保し円滑に事業承継がなされるための対策についてファイナンシャル・プランナーにアドバイスを求めている。Aさんへのアドバイスに関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、長男Bさん以外にもAさんの推定相続人となる親族がいるものとする。
2013年5月試験 問59
  1. 「X社株式の評価額を引き下げれば、X社株式を移転する際の取得者の資金負担が軽減しますが、引下げによってX社の経営に支障が出ることがないように配慮することが大切です」
  2. 「Aさん保有のX社株式を長男Bさんが取得する場合の長男Bさんの資金負担が心配ならば、あらかじめ、役員報酬を増やす等により長男Bさんの金融資産を増やしておく方策が考えられます」
  3. 「X社株式を長男Bさんが相続により取得する場合の相続税負担が心配ならば、あらかじめ過半数を占めるX社株式を、社外の取引先等に分散して譲渡しておくべきです」
  4. 「Aさんの相続が開始したときに、相続人間で円滑に遺産分割がなされるかどうかが心配ならば、あらかじめ遺言で、各相続人の相続分や遺産の分割方法を指定しておくことが有効です」

正解 3

問題難易度
肢18.9%
肢212.8%
肢374.9%
肢43.4%

解説

  1. 適切。役員退職金の支給や記念配当・特別配当への切り替えといった対策を行うことで、自社株式の評価額を引き下げて相続税の負担軽減を図ることができます。ただし、これは会社の資産・利益の減少を伴う方法なので経営に支障のない範囲で行うことが大切になります。
  2. 適切。役員報酬を増額すると、相続人となる長男Bさんの資産が増えるので、贈与税・相続税の支払いの対策をすることができます。
  3. [不適切]。自社株式の過半数を外部に分散させてしまうと、経営権を維持できなくなります可能性があります。納税負担を軽減して後継者に経営権を維持させるには、贈与税の納税猶予の特例や遺留分に関する民法の特例を活用する方法があります。
  4. 適切。円滑な遺産分割のために、遺言で各相続人の相続分や遺産の分割方法を指定することは有効な策です。
したがって不適切な記述は[3]です。