FP2級 2021年1月 実技(FP協会:資産設計)問2
問2
フィデューシャリー・デューティー(受託者責任)を遂行する軸として2017年3月に金融庁が公表した「顧客本位の業務運営に関する原則」以下「本原則」というに関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。- 本原則では、金融事業者は顧客の資産状況、取引経験、知識等を把握し、当該顧客にふさわしい金融商品の販売、推奨等を行うべきだとしている。
- 本原則は、金融事業者がとるべき行動について、金融庁が詳細に規定する「ルールベース・アプローチ」のみを採用するとしている。
- 金融事業者が、本原則を採択したうえで、自らの状況等に照らし、本原則の一部を実施しない場合は、その理由や代替策を十分に説明することが求められる。
- 本原則を採択する場合、金融事業者は策定した業務運営に関する方針を定期的に見直す必要がある。
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正解 2
分野
科目:A.ライフプランニングと資金計画細目:1.ファイナンシャル・プランニングと倫理
解説
「顧客本位の業務運営に関する原則」は、金融事業者が顧客本位の業務運営におけるベスト・プラクティスを目指す上で有用と考えられる原則を定めたものです。2024年7月現在、次の7つの原則が示されています。
- 原則1(顧客本位の業務運営に関する方針の策定・公表等)
- 金融事業者は、顧客本位の業務運営を実現するための明確な方針を策定・公表するとともに、当該方針に係る取組状況を定期的に公表すべきである。当該方針は、より良い業務運営を実現するため、定期的に見直されるべきである。
- 原則2(顧客の最善の利益の追求)
- 金融事業者は、高度の専門性と職業倫理を保持し、顧客に対して誠実・公正に業務を行い、顧客の最善の利益を図るべきである。金融事業者は、こうした業務運営が企業文化として定着するよう努めるべきである。
- 原則3(利益相反の適切な管理)
- 金融事業者は、取引における顧客との利益相反の可能性について正確に把握し、利益相反の可能性がある場合には、当該利益相反を適切に管理すべきである。金融事業者は、そのための具体的な対応方針をあらかじめ策定すべきである。
- 原則4(手数料等の明確化)
- 金融事業者は、名目を問わず、顧客が負担する手数料その他の費用の詳細を、当該手数料等がどのようなサービスの対価に関するものかを含め、顧客が理解できるよう情報提供すべきである。
- 原則5(重要な情報の分かりやすい提供)
- 金融事業者は、顧客との情報の非対称性があることを踏まえ、上記原則4に示された事項のほか、金融商品・サービスの販売・推奨等に係る重要な情報を顧客が理解できるよう分かりやすく提供すべきである。
- 原則6(顧客にふさわしいサービスの提供)
- 金融事業者は、顧客の資産状況、取引経験、知識及び取引目的・ニーズを把握し、当該顧客にふさわしい金融商品・サービスの組成、販売・推奨等を行うべきである。
- 原則7(従業員に対する適切な動機づけの枠組み等)
- 金融事業者は、顧客の最善の利益を追求するための行動、顧客の公正な取扱い、利益相反の適切な管理等を促進するように設計された報酬・業績評価体系、従業員研修その他の適切な動機づけの枠組みや適切なガバナンス体制を整備すべきである。
- 適切。本原則では、金融事業者は顧客に対して利益を最大限にすることを目標に履行しなければならず、顧客の資産状況、取引経験、知識等、取引目的を把握し、当該顧客にふさわしい金融商品の販売、推奨等を行うべきとしています。
- [不適切]。本原則では、金融事業者がとるべき行動を金融庁が詳細に規定する「ルールベース・アプローチ」ではなく、原則だけを定義し各金融事業者が各々の立場に応じて原則を実践するための行動を判断する「プリンシプルベース・アプローチ」を採用しています。
- 適切。金融事業者が本原則を採択した上で、自らの状況等に照らして一部の原則を実施しないことが適切と判断したときは、その実施しない理由や代替策を十分に説明することが求められています。
- 適切。金融事業者は本原則を採択する場合、策定した業務運営に関する方針を策定・公表したうえで、その取組状況を定期的に公表するとともに定期的に見直す必要があります。
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