相続と法律(全76問中27問目)

No.27

民法および法務局における遺言書の保管等に関する法律に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
2021年5月試験 問60
  1. 被相続人の配偶者が配偶者居住権を取得するためには、あらかじめ被相続人が遺言で配偶者居住権を配偶者に対する遺贈の目的としておく必要があり、配偶者が、相続開始後の共同相続人による遺産分割協議で配偶者居住権を取得することはできない。
  2. 各共同相続人は、遺産の分割前において、遺産に属する預貯金債権のうち、相続開始時の債権額の3分の1に法定相続分を乗じた額(1金融機関当たり150万円を上限)の払戻しを受ける権利を単独で行使することができる。
  3. 遺言者が自筆証書遺言を作成する場合において、自筆証書遺言に財産目録を添付するときは、その目録も自書しなければ無効となる。
  4. 遺言者が自筆証書遺言を作成して自筆証書遺言書保管制度を利用した場合、その相続人は、相続開始後、遅滞なく家庭裁判所にその検認を請求しなければならない。

正解 2

問題難易度
肢111.0%
肢238.8%
肢37.5%
肢442.7%

解説

  1. 不適切。配偶者居住権は、所有権と居住権を分割することで、それまで居住していた住居に配偶者が終身住み続けられるようにした権利で、次の方法のいずれかの方法により取得することができます。
    1. 遺産分割協議によって配偶者居住権を取得するとき
    2. 遺言者により配偶者居住権を遺贈の目的としたとき
    3. 相続開始前に被相続人と配偶者で配偶者居住権の死因贈与契約をしたとき
    4. 家庭裁判所の審判により取得したとき
  2. [適切]。預貯金債権は遺産分割の対象とされているため、被相続人の死亡が金融機関に伝わると勝手な引出しを防止するため口座が凍結されます。しかし、葬式費用や遺族の当面の生活資金が不足することへの救済として、遺産分割前の相続人が預貯金口座から一部払戻しを受けることができる「預貯金払戻し制度」があります。払戻しできる金額は「預貯金の額×1/3×法定相続分」かつ「1金融機関あたり150万円」が上限ですが、共同相続人全員の署名などは必要なく、単独で払戻しを受ける権利を行使することができます。
  3. 不適切。自筆遺言証書は遺言書の全文、日付及び氏名を自書して、これに押印して作成しますが、自筆遺言証書に添付する財産目録についてのみ自書でなくても良いことになっています(パソコンでの作成や通帳のコピーでも可)。
    遺言者が自筆証書遺言を作成する場合において、自筆証書に財産目録を添付するときは、その目録も自書しなければ無効となる。2021.1-60-4
    自筆証書遺言を作成する場合、自筆証書に添付する財産目録についても、自書しなければならない。2020.1-60-2
  4. 不適切。自筆証書遺言書保管制度とは、自書証書遺言書を法務局で預かる制度で、法務局では遺言書に不備がないかの確認をしたうえで原本の保管と画像のデータ化を行います。そのため、法務局に預けた時点で遺言書の内容が確認されており、相続開始後に検認をする必要はありません。相続開始後は遺言書の画像や作成年月日などが記載された遺言書情報証明書を交付してもらうことができます。
    遺言書(公正証書遺言として作成されたものを除く)の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。2015.10-54-4
したがって適切な記述は[2]です。