不動産の取引(全95問中93問目)

No.93

不動産の売買契約上の留意点に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
2013年1月試験 問42
  1. 民法では、解約手付が交付された場合、買主が売買代金の一部を支払った後では、売主は手付金の倍額を現実に提供することによる売買契約の解除はできないとされる。
  2. 土地の売買契約において、その土地の登記記録の面積と実測面積とが相違しても、その面積の差に基づく売買代金の増減精算は行わないという旨の特約は、有効である。
  3. 建物の売買契約において、売買契約の対象となる建物が引渡し前に類焼・水害等で滅失した場合は、買主は売買契約を解除することができるという旨の特約は、無効とされる。
  4. 民法では、売買契約の目的物に契約内容に適合しない事実があった場合、その契約不適合について売主に過失がなくても、売主は、原則として、担保責任を負わなければならないとされる。

正解 3

問題難易度
肢114.5%
肢29.9%
肢364.0%
肢411.6%

解説

  1. 適切。売買契約で買主から売主に解約手付が交付された場合、相手方が契約の履行に着手するまでであれば、買主はその手付を放棄し、売主はその手付の倍額を現実に提供することで、当該契約を解除することができます。
    本肢ケースのように「買主が売買代金の一部を支払った」場合、契約の履行に着手したとみなされるため、売主は手付の倍額を提供しても契約解除することはできません。
  2. 適切。土地の売買契約において、その土地の登記面積と実測面積とが相違していても、その面積の差に基づく売買代金の増減精算は行わないという特約を定めることは有効です。このように登記面積に基づき確定する取引を「公簿売買」といいます。また、実測面積に基づき確定する場合を「実測売買」といいます。
    土地の売買契約において、その土地の登記記録の面積と実測面積とが相違していても、その面積の差に基づく売買代金の増減精算は行わないという旨の特約は有効である。2021.3-43-4
    土地の売買契約において、その土地の登記記録の面積と実測面積とが相違していても、その面積の差に基づく売買代金の増減精算は行わないという旨の特約は、有効である。2018.9-43-3
    土地の売買契約において、その土地の登記記録の面積と実測面積とが相違していても、その面積の差に基づく売買代金の増減精算は行わないという旨の特約は、有効である。2015.1-42-2
  3. [不適切]。建物の売買契約において、契約後、対象となる建物が引渡し前に類焼・水害等自然災害などの当事者双方の責めに帰すことのできない原因によって滅失した場合、売主の引渡し債務は履行不能により消滅し、買主は売主からの代金支払い請求を拒むことができます。民法改正により契約解除に際して債務者の帰責事由は不要となったので、特約がなくても契約解除できますが、契約上、買主は売買契約を解除することができるという特約を定めることもできます。民法改正前の実際の取引では、この特約を付けることで買主の危険負担を排除することが一般的でした。
  4. 適切。売主の担保責任は原則として無過失責任とされています。よって、売買契約の目的物に契約不適合があった場合、売主の故意または過失の有無に関係なく、売主は買主に対して担保責任を負わなければなりません。
    売買の目的物に契約内容に適合しない事実があった場合、売主は、その契約不適合があることについて故意または重大な過失があるときに限り、買主に対して担保責任を負う。2018.9-43-4
    売買の目的物に契約内容の適合しない事実があった場合、売主がその契約不適合について善意無過失であるときは、売主は、担保責任を負わない。2018.5-43-2
    売主は、売買の目的物に契約内容に適合しない事実があることを知らなかった場合、その契約不適合について担保責任を負う必要はない。2017.5-43-4
    売買の目的物に契約内容に適合しない事実があった場合、その契約不適合について売主に過失がなくても、売主は、原則として、担保責任を負わなければならない。2017.1-44-1
    売買契約の目的物に契約内容に適合しない事実があった場合、売主は、その不適合があることについて故意または過失があるときに限り、買主に対して担保責任を負う。2015.1-42-3
    売買契約の目的物である建物に契約内容に適合しない事実があった場合、売主は、その契約不適合について故意または過失がある場合に限り、買主に対して担保責任を負う。2014.1-44-3
    売買契約の目的物に契約内容に適合しない事実があった場合、その契約不適合について契約時に買主が知っていた場合には、売主は買主に対して担保責任を負わない。2013.9-43-3
したがって不適切な記述は[3]です。