FP2級過去問題 2025年5月学科試験 問44

問44

建物の賃貸借に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、本問においては、定期建物賃貸借契約以外の建物賃貸借契約を普通借家契約という。
  1. 期間の定めのない普通借家契約において、正当な事由に基づき、建物の賃貸人による賃貸借の解約の申入れが認められた場合、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から6カ月を経過することによって終了する。
  2. 普通借家契約において期間を1年未満に定めた場合、期間は1年とみなされる。
  3. 賃借人は、建物の引渡しを受けた後にこれに生じた損傷があっても、通常の使用および収益によって生じた建物の損耗ならびに建物の経年変化によるものである場合は、賃貸借が終了したときに、その損傷を原状に復する義務を負わない。
  4. 賃借人が賃貸人の同意を得て建物に付加した造作について、賃貸借終了時に、賃借人が賃貸人に対してその買取りを請求しないこととする旨の特約は有効である。

正解 2

問題難易度
肢117.3%
肢266.7%
肢36.1%
肢49.9%

解説

  1. 適切。期間の定めのない普通借家契約では、貸主・借主の双方からいつでも解約の申入れをすることができます。貸主から解約申入れをする場合には正当事由が必要で、申入れから6ヵ月後に終了します。他方、借主からの申入れの場合には正当事由は不要で申入れから3ヵ月後に終了するという違いがあります。
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    期間の定めのない普通借家契約において、建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをし、正当の事由があると認められる場合、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から6ヵ月を経過することによって終了する。2023.9-45-2
    賃貸借期間の定めのない普通借家契約では、賃借人が解約の申入れをした場合、当該契約は解約の申入れの日から6ヵ月を経過することによって終了する。2016.9-44-2
    期間の定めのない借家契約について賃借人が解約を申し入れた場合、当該契約は解約の申入れの日から6ヵ月経過後に終了する。2014.9-44-2
  2. [不適切]。普通借家契約の存続期間は、1年以上(上限なし)です。1年未満の存続期間の定めは無効となり、「期間の定めがないもの」とみなされます。
    普通借家契約において、存続期間を1年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなされる。2024.5-44-1
    普通借家契約において、存続期間を3ヵ月と定めた場合、期間の定めがない建物の賃貸借とみなされる。2023.1-45-1
    普通借家契約において存続期間を1年未満に定めた場合、その存続期間は1年とみなされる。2022.9-44-1
    普通借家契約において、存続期間を10ヵ月と定めた場合、期間の定めがない建物の賃貸借とみなされる。2021.9-44-1
    普通借家契約において存続期間を10ヵ月と定めた場合、期間の定めのない建物の賃貸借とみなされる。2018.9-44-2
    普通借家契約では、賃貸人と賃借人の合意により、賃貸借期間を1年未満とした場合でも、賃貸借期間は1年とみなされる。2016.9-44-1
    定期借家契約では、1年未満の賃貸借期間を定めることができる。2014.5-43-4
    定期借家契約においては、建物賃貸借の期間を1年未満と定めた場合でも、期間の定めのない建物の賃貸借とみなされることはない。2013.9-44-4
  3. 適切。賃借人は賃貸借契約の終了時に、賃借物を原状回復して返還する義務を負いますが、通常の使用収益に伴って生じた賃借物の損耗や経年変化については原状回復義務の対象外です。これら通常損耗は賃料に織り込み済であると解されているからです。
    賃借人は、建物の引渡しを受けた後の通常の使用および収益によって生じた建物の損耗ならびに経年変化については、賃貸借が終了したときに原状に復する義務を負わない。2024.1-43-1
    賃借人は、建物の引渡しを受けた後にこれに生じた損傷であっても、通常の使用および収益によって生じた建物の損耗ならびに経年変化によるものである場合、賃貸借が終了したときに、その損傷を原状に復する義務を負わない。2022.1-44-2
    賃借人は、建物の引渡しを受けた後にこれに生じた損傷であっても、通常の使用および収益によって生じた建物の損耗および経年変化については、賃貸借終了時、原状に復する義務を負わない。2021.5-43-3
  4. 適切。建物の賃貸借において、賃貸人の承諾を得て賃借人が設置した造作(例:エアコンなど)がある場合、借家契約終了時に、賃借人は賃貸人に対して時価での買取りを請求できます。この造作買取請求権は任意規定とされるため、普通借家・定期借家のいずれの契約でも特約により排除することが可能です。
    普通借家契約において、賃借人が賃貸人の同意を得て建物に付加した造作について、賃貸借終了時、賃借人が賃貸人に、その買取りを請求しない旨の特約をした場合、その特約は無効である。2024.1-43-2
    普通借家契約において、賃借人が賃貸人の同意を得て建物に設置した造作について、賃貸借終了時、賃借人が賃貸人にその買取りを請求しない旨の特約をすることができる。2021.5-43-4
    建物の賃借人が賃貸人の同意を得て建物に設置した空調設備などの造作について、建物賃貸借契約終了時に賃借人が賃貸人にその買取りを請求しない旨の特約は有効である。2021.3-44-3
    定期借家契約において、賃借人が賃貸人の同意を得て設置した造作について、「期間満了時、賃借人は賃貸人に対し、造作を時価で買い取るよう請求することができない」という特約は有効である。2017.5-45-3
    建物の賃借人が賃貸人の同意を得て建物に設置した空調設備などの造作について、借家契約終了時に賃借人が賃貸人にその買取りを請求しない旨の特約は有効である。2015.9-44-3
    建物の賃借人が賃貸人の同意を得て室内に設置したエアコンなどの造作について、借家契約終了時に賃借人が賃貸人にその買取りを請求しない旨をあらかじめ特約しても、その特約は無効となる。2014.9-44-3
したがって不適切な記述は[2]です。