FP2級過去問題 2019年1月学科試験 問42(改題)

問42

不動産の売買契約に係る民法の規定に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、特約については考慮しないものとする。
  1. 買主に債務の履行遅滞が生じた場合、売主は、履行の催告をすることなく直ちに契約を解除することができる。
  2. 売買の目的物に契約不適合があり、買主が売主の担保責任に基づく損害賠償の請求をする場合、買主は、その請求を売買契約締結時から5年以内にしなければならない。
  3. 未成年者が法定代理人の同意を得ないで不動産の売買契約を締結した場合、自らを成年者であると信じさせるため詐術を用いたときは、その売買契約を取り消すことができない。
  4. 買主が売主に解約手付を交付した場合、買主が売買代金を支払った後であっても、売主は、受領した代金を返還し、手付金の倍額を現実に提供することにより、契約の解除をすることができる。

正解 3

問題難易度
肢16.4%
肢27.8%
肢372.4%
肢413.4%

解説

  1. 不適切。契約に債務不履行があった場合、その不履行が軽微でなければ、契約を解除することができます。このとき、債務不履行の状態によって、契約解除をしたい債権者がとるべき手続きは異なります。
    履行不能(履行が不可能であるとき)
    履行拒絶(相手方が履行拒絶の意思を明確に示したとき)
    履行の催告をすることなく、直ちに契約解除できる
    履行遅滞(履行ができるのに履行期を過ぎても履行しないとき)
    相当の期間を定めて履行の催告をし、その期間内に履行されないときに契約解除できる
    本肢は「履行遅滞」の状態なので、履行の催告をした後でなければ、契約を解除することはできません。
    買主に債務の履行遅滞が生じた場合、売主が契約を解除するためには、相当の期間を定めて履行の催告をしなければならない。2018.9-43-1
    買主に債務の履行遅滞が生じた場合、売主は、履行の催告をすることなく直ちに契約を解除することができる。2017.5-43-2
  2. 不適切。引き渡された売買の目的物に関して、買主が、売主の担保責任を追及する場合は、買主はその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しなければなりません。売主はその契約不適合について過失がなくても担保責任を負います。
    なお、担保責任の追及権には消滅時効の適用があるので、権利行使できることを知った時から5年、権利行使できる時から10年で消滅します。
    民法では、売買の目的物に契約不適合があり、買主が売主の担保責任に基づく損害賠償の請求をする場合、買主は、その不適合を知った時から2年以内にその旨を売主に通知しなければならない。2019.5-43-3
    民法では、売買の目的物が契約内容に適合しないものであり、買主が売主の担保責任に基づく損害賠償の請求をする場合、買主は、その不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しなければならない。2018.1-43-3
    売買の目的物に契約内容に適合しない事実があり、買主が売主の担保責任に基づく損害賠償の請求をする場合、買主は、その契約不適合がある事実を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しなければならない。2017.5-43-3
    売買の目的物に契約内容に適合しない事実があり、買主が担保責任に基づく権利を行使して契約を解除する場合、買主は、その不適合を知った時から2年以内にその旨を売主に通知しなければならない。2017.1-44-2
    売買の目的物に契約内容に適合しない事実があり、買主が売主の担保責任に基づく権利を行使して損害賠償の請求をする場合、その不適合を知った時から3ヵ月以内にその旨を売主に通知しなければならない。2016.5-43-3
    売買の目的物に契約内容に適合しない事実があり、買主が売主の担保責任に基づく権利を行使して契約を解除する場合、買主は、その不適合を知った時から6ヵ月以内にその旨を売主に通知しなければならない。2015.5-43-4
    買主が売主に対して担保責任に基づく権利を行使するためには、買主は、その契約不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しなければならない。2014.9-43-2
  3. [適切]。未成年者が法律行為を行うには、法定代理人(多くの場合は親)の同意が必要になり、同意のない場合には取り消すことができます。ただし、自ら成年者・行為能力者であると信じさせるために「詐術」を用いた(嘘をついた)ときには契約を取り消すことができません
    未成年者が法定代理人の同意を得ずに不動産の売買契約を締結した場合であっても、その法定代理人は当該売買契約を取り消すことはできない。2021.3-43-1
    未成年者が法定代理人の同意を得ずに不動産の売買契約を締結した場合、原則として、その法定代理人だけでなく、未成年者本人も、当該売買契約を取り消すことができる。2019.9-43-2
    民法では、未成年者が法定代理人の同意を得ずに売買契約を締結した場合、原則として、その法定代理人は当該売買契約を取り消すことができる。2019.5-43-4
    未成年者が法定代理人の同意を得ずに売買契約を締結した場合、その法定代理人は当該売買契約を取り消すことができる。2016.5-43-2
  4. 不適切。解約手付が買主から売主に交付された場合、相手方が契約の履行に着手するまでは、買主は手付の放棄、売主は手付の倍額償還によって、契約を解除することができます。ただし、買主の代金の一部支払いや売主の建築工事の着手など既に契約の履行に着手した後は、契約を解除することはできません。
    本肢では、買主が売買代金の一部を支払っており契約の履行に着手したとみなされるため、売主は手付の倍額を買主に償還しても契約解除できません。
    買主が売主に解約手付を交付した後、売買代金の一部を支払った場合、売主は、受領した代金を返還し、かつ、手付金の倍額を現実に提供しても、契約を解除することができない。2022.9-43-3
    買主が売主に解約手付を交付した場合、買主が代金の一部を支払った後でも、売主は、自らが契約の履行に着手するまでは、受領した代金を返還し、かつ、受領した手付の倍額を買主に現実に提供することにより、契約を解除することができる。2022.5-43-3
    買主が売主に解約手付を交付した場合、買主が代金を支払った後であっても、売主は、自らが契約の履行に着手するまでは、受領した手付の倍額を買主に償還して契約を解除することができる。2019.9-43-1
    民法では、買主が売主に解約手付を交付した場合、買主が売買代金の一部を支払った後では、売主は、受領した代金を返還し、かつ、手付金の倍額を現実に提供しても、契約を解除することができない。2019.5-43-2
    民法では、買主が売主に解約手付を交付した場合、買主が売買代金の一部を支払った後でも、売主は、受領した代金を返還し、かつ、手付金の倍額を現実に提供することにより、契約を解除することができる。2018.1-43-2
    買主が売主に解約手付を交付した場合、買主が売買代金の一部を支払った後でも、売主は、受領した代金を返還し、かつ、手付金の倍額を現実に提供することにより、契約を解除することができる。2017.5-43-1
    買主が、売主に解約手付を交付した後、売買代金の一部を支払った場合は、買主の契約の履行の着手に当たるため、売主は、解約手付の倍額を現実に提供することによる契約の解除をすることができない。2016.5-43-1
    買主が売主に解約手付を交付した場合、買主が契約の履行に着手するまでは、売主は受領した解約手付の倍額を買主に現実に提供することにより、売買契約を解除することができる。2015.1-42-1
    買主が売主に解約手付を交付した後、さらに売買代金の一部を支払った場合、売主は、受領した売買代金を返還し、かつ、解約手付の倍額を買主に現実に提供すれば、売買契約を解除することができる。2014.1-44-4
    買主が売主に解約手付を交付し、さらに売買代金の一部を支払った場合、売主は、受領した売買代金を返還し、かつ、解約手付の倍額を現実に提供すれば、売買契約を解除することができる。2013.9-43-1
    民法では、解約手付が交付された場合、買主が売買代金の一部を支払った後では、売主は手付金の倍額償還による売買契約の解除はできないとされる。2013.1-42-1
したがって適切な記述は[3]です。